ACM(Air Combat Manoeuvring)訓練

私に質問をされる方は、やはり戦闘機が大好き!という方が多いです。

私自身も航空自衛隊の戦闘機出身ということをうたっておりますので、これはある意味普通かなーと。

その中で最も多いのがACM(空中戦)のお話です。

さて、ゲームはさておき実際の空中戦というのはどんなものなのでしょう。


どこでやってるの?

日本には自衛隊が管轄する訓練空域があります。

そのほとんどは日本本土から離れた洋上になりますが、その訓練空域で行います。

基地を離陸した戦闘機は、決められた進出経路を飛行して空域へと向かい、訓練終了後はやはり決められた経路を飛行して基地に戻っています。

寄り道したりはしないんですよw

どんな種類があるの?

最も有名なものは、「対戦闘機戦闘」でしょう。

相手が戦闘機であるという想定で行われる訓練です。

その中でもさらに種類が分かれていて、

  • 自機より世代の古い戦闘機や同じ世代、より上級の世代
  • 1対1からはじまって、多数対多数という機数による組み合わせ
  • 偵察機や輸送機、爆撃機まで含んだ、多数機対処など

と相手の航空機や編隊の規模、機種や機数に合わせて、異なる戦略や戦術を使用して訓練を行います。

どれくらいの高度でやってるの?

訓練によって異なりますが、

  • 対戦闘機戦闘:10000ft~25000ft
  • 対水、対艦戦闘:3000ft以下
  • 高高度要撃:35000ft~50000ft

ですね。もちろん、任務や想定によって変化します。(ft:フィート)

高度差を使ったりする?

使います。

一般的には、「より高い高度」にいる方が優位とされていますが、高ければ良いと言うものでもありません。

例えば、F-15Jの場合は35,000ftあたりが最も燃費も加速も良い高度ですが、空気密度が低いため、機動性はかなり落ちます。

機動性だけど追い求めるなら、より低高度がいい。でも低すぎると使えるエネルギーが少ないと言う事になります。

※ 戦闘機はエネルギー(高度や速度)を互いに転換しながら機動を行います。

旋回戦闘ってどれくらいの大きさ?

だいたいですが、約1nmくらいですね。(約6000ft:約2kmです)

もちろん、速度や高度、旋回性能や、その時の操縦士の操縦によって変わります。

相手よりより小さく回ることで、相手の後方につきやすくなります。

小さく回るには、より少ない速度のほうがいいのですが、接敵や離脱を考えると低速はかなり不利になります。

そういった意味では、速度が大きいほど有利ですが、今度は旋回半径が大きくなりすぎます。

もちろん、高いG(重力加速度)をかけて旋回すれば良いのですが、最大Gは決まっています。(F-15は最大9G)

このため、オーバーGすることも考慮しないといけません。

また、単に操縦桿を引けばGはかかりますが、オーバーGをさせないために、「どれだけ引いてもあるG以上はかからない速度」というのが有ります。(航空力学で言うV-N線図)

F-15の場合は約420kt前後なのですが、そこを中心に機動を繰り返すのが、オーバーGせずに最大の機動を継続できる最良の速度になります。

武器の発射はするの?

しませんwww

模擬弾を搭載して、発射の模擬は行います。

もちろん撃墜判定も可能ですので、模擬弾で十分なのです。

部隊の中でも一部の操縦者は、ミサイル戦術課程というものに参加して、実弾による訓練を行うこともあります。

私も参加させていただきましたが、その際はQF-104J(F-104を標的機として改造したもの)に対する、AIM-7F、AIM-7M、AAM-3の能力検証を行いました。

機体に搭載している機銃は、年に2回程度実弾による射撃訓練が行われています。

ゲームと違う?

全く異なりますwww

最近のフライトシミュレータでは、かなり本格的になっていて、すごいなーとは思いますが、やはり無理があることも感じます。

これは個人差もあるのでしょうけど、「体感がない。」というのが私には合わないようで、むちゃくちゃなことしてしまいそうになりますね。

実機だと、「飛行機がイヤイヤしてる。」のが伝わりますので、自然に操縦桿に反映されるのですが・・・。


さて、いかがでしたでしょうか。

最近いただいた質問をピックアップしてお話してみました。

まだまだ、興味は尽きないかとおもいますので、ご質問はお気軽にTwitterやメールでどうぞ。

2件のコメント

  1. 米国作家の小説にF4の凄腕のパイロットにかかると、イーグルドライバーがしてやられるというエピソードがありました。 ホントですか?

    1. どんなに優秀な機体を使って、素晴らしい武器を搭載しても、最後は操縦者の腕
      というのは、今の時代でも通用するものだと思っています。
      実際に、F-104にてF-15に対して「撃墜判定」を出したパイロットもいます。
      F-4とのDACT経験もありますが、決してF-15に対して見劣りするものではなく、やはりパイロットの腕だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です