2017年があけて、入学試験を控えている方が多いかと思います。
それにちなんででしょうか、Twitterでも将来パイロットを目指すべく、進路に悩む方も多いようです。
その中でもダントツに多いのが、「理系が有利ですよね!」、「文系ではだめですか?」、「どっちがいいですか?」系のご質問です。
一概には言えないのですが、空飛ぶたぬきが今まで見てきたパイロット訓練生を思い出しつつ、文系理系の是非について書いてみたいと思います。
そもそもパイロットに必要な学科とは
まずは、パイロットになるために必要な資格から考えてみましょう。
パイロットのライセンス(免許)は技能証明を言いますが、これは国家資格ですので、試験があります。
学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。
- 航空法規
- 航空力学
- 航空気象
- 管制通信
- 航法
の5科目です。
法規は、法律ですからある意味文系と言えるかと思います。実際に法律を読み取って、内容を理解するのは、辞典を読むことにとてもよく似ていますね。
力学は、一般的に言うと「物理」です。それに航空ならではの空気などの流体の考え方、重力との関係などを学びますので、理系ですよね。
気象は、分類しにくいのですが、理系に近いといえます。水や空気の変化について温度や湿度を考えて、さらに圧縮や発散といった要素も考える必要があります。でも、気象図なんかの解読は文系っぽい気もします。
管制は単純に語学としての英語と、航空管制というある種の法律を読み取る力が必要です。さらに進入方式や出発方式の解読や理解には、ちょっとした数学(三角関数など)の知識も必要になります。
航法は、地図を読み取る能力なので文系ですが、空気の中を飛行するので、風とは切っても切れない関係になります。なので、風力三角形と呼ばれる三角関数を理解して、さらにそれを航法用コンピュータと呼ばれる計算尺を使って求めることが必要です。文系でも有り、理系でもあるのです。
他にも資格が必要です
自家用操縦士としてレジャーで飛行するなら、航空特殊無線技士という無線資格
お客様や荷物を運ぶ、いわゆるプロパイロットの場合は、航空無線通信士という無線資格
それぞれ、やはり国家資格ですので、試験があります。
- 電波法規
- 無線工学
- 英語(航空無線通信士のみ)
- 無線交話法
の4(3)科目です。
電波法規は、電波に関する法律ですから、先ほどの航空法と同じように考えられますね。
無線工学は、電気の性質や流れ方、磁力線や電波そのものについて勉強しますので、理系ですね。この中には対数をつかった計算問題もあったりしますので、やはり理系でしょうか。
英語は、ちょっと普通の英語の試験とは異なり、実際に使用する管制英語(管制用語)になります。これは文系でしょうか。意外なことにTOEICが高得点の方でも不合格になることがあるという不思議な試験です。
無線交話法は、会話ですね。文系理系関係なくコミュニケーション・・・というほどでもないかな。
これで終わり?
試験と名前がつくのはこれくらいのものですが、あとは実技試験で口頭試問があったりしますので、やはりコミュニケーション能力も必要なのでしょう。
何より、口頭試問の場合は「根拠に基づいた正しい知識で答えること」ができないと合格しません。
間違ったことを答えると、試験官は「違います。」とは言わずに、どんどん突っ込んできます。
(もう、泣きそうになるくらい厳しいですよw)
試験官の質問の意図を読み取る能力と知識で裏付けられた正しい回答、それを自分の言葉で話す能力が必要ですね。
ある意味、文系なのかな・・・。
総合すると・・・
さて、みなさんはどのように感じましたか?
Twitterでみなさんからいただいた質問に答えるとき、私は必ずその裏(バックボーン)を考えて答えます。
例えば「進学するのですが、文系でもパイロットになれますか?」という質問
この質問の裏には
「私は理系は苦手、だけどパイロットになりたい。文系でもなれるのかな?」
という気持ちがあるのかな。と思っています。
空飛ぶたぬきは、こういったウェブサイトを運営しつつ、航空関連教育の会社も経営していますから、誰でも大丈夫だよ~という営業トークをすべきなのですが、どうも経営には向かない性格のようですので、思った通りに答えますと・・
理系だろうが文系だろうが、やることやらないとパイロットになれないよ
とお答えしますw
厳しい言い方をしますけど、パイロットに限らず、どんな仕事でも、「逃げちゃダメ」なんですw
(某最終決戦兵器の巨大人造人間が出てくるアニメの主人公もそう言っていますw)
理系文系よりも、なりたいものがあるなら、必死になってやってみないとダメなんだよ(*^_^*)と。
得意分野で進学してトップを独走するもよし、あえて苦手な分野でそれを伸ばすように努力するもよしです。
大事なのは、
「信念を持って、やるべき事をやってるか?」
と常に自分に問いかけること。
エアラインでも、自衛隊でも、官公庁でも、パイロットはやがて機長という重責を背負うようになります。
機長になるまではもちろんのこと、機長となった後、自らを支えるのはそれまで得てきた経験と知識と技術でしかないのです。
それらは、上を向いて口を開けていても決して手に入れることはできません。
自らが必死で得ようとしないと、自分の物にはならないのです。
さて、質問をしてくれた皆さん、空飛ぶたぬきから質問しますね。