佐賀県にある、エス・ジー・シー佐賀航空株式会社の運航本部長殿よりお電話をいただきました。
「機長審査をお願いしたい。」とのこと。
とてもありがたいお話でしたので、快く引き受けて佐賀空港へ行って参りました。
私は1月末日で佐賀航空株式会社さんを退職しているのですが、実は佐賀航空さんの操縦士としては登録を継続しているのです。
それは、新型のセスナC172型機の資格を持っているから。
小型機の代名詞とも言えるセスナは二人乗りの小型機や代名詞とも言える4人乗りのタイプ、ターボプロップの単発機やビジネスジェットで有名なサイテーションなどもセスナ社の飛行機
私の持っているC172の資格というのは、正確にはC172S型と言われる、「GARMIN社製の計器がついた機体」のこと。
簡単に言えば、「ディスプレイタイプの計器板」のセスナなのです。
このS型は、飛行機としてはC172型になるのですが、今までのアナログ計器のC172とは扱いが全く別物です。
そのため、同じ小型機といえども、有する資格が異なります。(正確には、経験と会社での運用実績)
佐賀航空さんには、すでにお一人いらっしゃるのですが、その方は審査担当なので、社員の訓練はできないのです。
これは、「練習を担当した教官と、審査を担当する人は別の人でなければならない。」という厳しい掟があるため。
ですので、退職した私は、このC172Sのために、操縦士名簿に名前を連ねているというわけです。
ただ、会社の操縦士として飛行するためには、1年に1回審査を受ける必要があります。
審査なので試験、なので、適当なことは出来ません。
離陸、失速、低速飛行、計器飛行、パターンフライト、緊急状態対処、エンジン停止対処、着陸複数種
とやることはそれなりに多い。
しばらく飛行していなかったので、少々不安でしたが、無事に合格
これで、また1年、佐賀航空さんの操縦士として飛行することが出来ます。
C172SはGARMIN社のディスプレイ計器(一般的に言う、グラスコクピット)となっており、今までのアナログ計器とは異なります。
見た目は、かなり細かい表示となりますが、機能としてはエアラインの機体とほぼ同等の能力が備わっています。
なので、飛ぶときの手順もVOICEプロシージャー(機内での発声要領)もエアラインと同じように行います。
ただ、少し異なるのは、「一人で飛べる」ということ。
なので、VOICEは同乗者に確認をとるというスタンスになります。
でも、操作がとても多い・・・・。
例えば、普通に旋回するときも、アナログですと・・・
- 旋回方向を決まる
- 安全確認する「Right(Left) side clear.」
- 旋回操作
なのですが、ディスプレイ(GARMIN)ですと
- 旋回方向を決める
- 安全確認する「Right(Left) side clear.」
- 方位バグ(Heading bug)をセットする
- 「Heading bug set 360(旋回方位) 」
- 旋回操作
と、BUGを操作する分、手間が多くなります。
ここで言うBUGとは、AP(Auto Pilot)にコマンド(指示)を与える装置です。
APを使用していなくても、BUGは常に表示されているため、操作する必要があります。
言い換えれば、常に機体の諸元(速度、高度、方位)を一致していないとおかしい事になります。
このため、機長の意図を明示するという意味合いも含めて、BUGを「操作する前にセットする。」のが基本操作になるのです。
ちょっと分かりやすく言えば
車で右に曲がろうとするときに
同乗者に「右に曲がるね」と伝えた後、自動車に「次は右に曲がるから」とコマンドを与えて、その後で「実際にハンドルを右に切る」ことになります。
これを聞いて
めんどくせ~
と思ったかたは、パイロットには向きません・・・・とは言いません。
私も面倒くさいので。
ただ、その航空機の使い方を考えて、将来的に大型機を二人で操縦するためには、「機長の意図」をつねに明確にする必要はあります。
そういう意味では、必要な操作なのです。
めんどくさくても、ちゃんとやる!
ここが大事なのかもしれませんね。