パイロットの実機訓練は、なぜ小さいプロペラ機なのか

これはよく聞かれます。

一般的には小さい機体から訓練を始めます。

正確には、「ガソリンエンジンを搭載した単発のプロペラ飛行機」から始めます。

なんで、そこまで細かく言ったかというと、きちんと理由があるんです。

ガソリンエンジン

一般にガソリンエンジンは、ジェットエンジンに比べてレスポンス(反応速度)がよいのです。

ここでいう反応速度というのは、「スロットルを勧めたときに、出力が遅れずに付いてくる」ことを言います。

言い換えれば、何かあって急激に出力、パワーが必要な時に、スロットルを出せばすぐに反応してくれる。

これは練習機には必要な性能のひとつなんです。

プロペラ機

これも先ほどのレスポンスと同じような理由なのですが、もう一つあります。

それは、「一般に失速に至るまで余裕がある」ことと「失速後の揚力確保が容易」という点です。

プロペラは翼の前にありますよね。

ということは、翼は「飛行機が進んでいる速度に比例した風」と「プロペラが発生させた風」の二つを利用出来ることになります。

つまり、低速でもある程度の風を受けて揚力を確保出来るという点です。

これにより、より低速度でも航空機を失速させずに維持することが出来るのです。

単発

これは、双発(エンジンが二つ以上)の場合は、片方のエンジンが故障した際に、片揺れが発生するからです。

二つのエンジンが離れているほど、片揺れは大きくなります。

それをそのままにしていると、飛行機は動いているエンジンに引っ張られる形となりますので、翼は斜め前方から風を受けることになります。

すると有効な翼面積(正確には前面投影面積)が減少して失速に至ることがあるのです。

 

このように、ガソリンエンジン単発機には練習機として使用するのに適した特性を兼ね備えていますので、パイロットの登竜門はプロペラ機(ちいさな飛行機)なのです。

でも、実は単発プロペラ機には別の特性があって、まっすぐ飛ばすのはジェット機よりも難しいという側面もあったりするのですが、このお話はまた今度ということで。

ちなみに、私は航空自衛隊の出身ですので、エアラインの方とは少し違うかもですが、 T-3という、単発レシプロ機から飛行訓練を始めました

最初はT-3単発レシプロ、その後はT-1単発ジェット、T-4双発ジェットの順で訓練を行い、T-4で事業用操縦士の技能証明を取得しました。

すこしづつ大きく複雑な機体になるんですね。

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