災害救援組織

まず、2018年7月の広域大雨災害に遭われた皆様、現在も孤立し苦しい生活を余儀なくされている皆様にお見舞い申し上げます。

大雨災害に思う

ここしばらくの日本では、自然災害が数多く発生している気がします。

これが、人災なのか天災なのかは別にして、どこに住んでいても、何をしていても、被害に遭う可能性は否定できません。

今回の大雨による災害状況を見ていて、人と物を輸送する手段を確保することが非常に重要だと思っています。

限られた交通手段

災害は突然発生し、日常使用できる事が当たり前の物が使えなくなります。

車両は道路があって初めて機能する物ですし、電車は線路があってこそ使える。

今回のように、道路や線路が水没となると、陸上輸送はほぼ全滅することになります。

そうなると、残るのは航空機や船舶が唯一の交通手段となります。

船舶の限界

船舶は、車両や電車、航空機に比べると、大量の物資を一度に運搬することが可能です。

しかし、港に隣接している必要があります。

軍隊等で使用されている、強襲揚陸型の船舶でない限り、港以外に接岸することは非常に難しいのです。

河川や海があっても、ある程度の深度がなければ座礁することにもなりかねません。

また、被災地が内陸部の場合、人や物を運ぶ陸上手段がなければ活用しきれない事になります。

航空機の限界

航空機も、船舶の港と同じく離着陸する場所(飛行場)が必須となります。

もちろん、回転翼航空機(ヘリコプター)であれば、飛行場でなくても、ある一定の広さがあれば着陸は可能です。

ただし、天候に左右されるという点では、航空機は一番脆弱性があるのかもしれません。

航空機の最大のメリットは、「災害地まで直線で移動でき、その直上まで飛行出来る。」ことにあります。

これは、地上の状況に全く影響を受けずに到着できることを指します。

今回の大雨災害では、被災地への陸上からのアクセスが出来ない状況が、救助、救援の難しさを増している事にあります。

しかし、多くの報道写真が撮影されていることからも分かるとおり、航空機であればその直上まで行くことは出来ます。

あとは、その場所で何が出来るかです。

特殊な運用

航空機から、救援物資を投下する事ができます。

通常、「物量投下」と言われてますが、航空機から(必要に応じてパラシュート等をつけて)物資を落とすことです。

これであれば、被災地に直接物資を届けることが出来ます。

また、回転翼航空機であれば被災地に直接着陸して、人を運ぶことが可能です。

もちろん、上記のいずれも高い技術力や要求を満たす航空機が必要なのは言うまでもありません。

空飛ぶたぬきは航空機(飛行機)を運用することが可能ですし、物量投下もできるかもしれません。

しかし、問題はもっと別の所にあります。

法律による制限

航空機から物資を投下したり、被災地に着陸することは、基本的にできません。

これは、法律によって禁止されているからです。

しかし、これらの禁止する法律は、例外、通称「但し書き」があり、国土交通大臣が認めれば可能となります。

関連する法律は以下のとおりです。

(離着陸の場所)
第七十九条 航空機(国土交通省令で定める航空機を除く。)は、陸上にあつては空港等以外の場所において、水上にあつては国土交通省令で定める場所において、離陸し、又は着陸してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

(飛行の禁止区域)
第八十条 航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

(最低安全高度)
第八十一条 航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

(捜索又は救助のための特例)
第八十一条の二 前三条の規定は、国土交通省令で定める航空機が航空機の事故、海難その他の事故に際し捜索又は救助のために行なう航行については、適用しない。

(巡航高度)
第八十二条 航空機は、地表又は水面から九百メートル(計器飛行方式により飛行する場合にあつては、三百メートル)以上の高度で巡航する場合には、国土交通省令で定める高度で飛行しなければならない。
2 航空機は、航空交通管制区内にある航空路の空域(第九十四条の二第一項に規定する特別管制空域を除く。)のうち国土交通大臣が告示で指定する航空交通がふくそうする空域を計器飛行方式によらないで飛行する場合は、高度を変更してはならない。ただし、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 離陸した後引き続き上昇飛行を行なう場合
二 着陸するため降下飛行を行なう場合
三 悪天候を避けるため必要がある場合であつて、当該空域外に出るいとまがないとき、又は航行の安全上当該空域内での飛行を維持する必要があるとき。
四 その他やむを得ない事由がある場合
3 国土交通大臣は、前項の空域(以下「高度変更禁止空域」という。)ごとに、同項の規定による規制が適用される時間を告示で指定することができる。

(物件の投下)
第八十九条 何人も、航空機から物件を投下してはならない。但し、地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそれのない場合であつて国土交通大臣に届け出たときは、この限りでない。

(落下さん降下)
第九十条 国土交通大臣の許可を受けた者でなければ、航空機から落下さんで降下してはならない。

これらの法律に定める「国土交通大臣の許可を受ける」ことは、簡単ではありません。

基本的には

  • 必要に応じ、その都度
  • 必要最低限の期間
  • 機体や操縦者が限定され
  • 場所も指定される

という、非常時にすぐに申請して運用出来るものではないのです。

これらのことが、災害時における航空機運用の難しさとなっています。

法律以外の問題

前述の法律以外にも問題はあります。

例えば、人員輸送であれば、被災地から「誰を運ぶのか」です。

優先順位は、命に関わる人や小さい子供、お年を召された人等考えられますが、その優先順位を誰が決めるのかという問題です。

また、怪我をしている人を搬送した場合、安全な場所に着陸した後、病院までの搬送経路や搬送システム等が確立されていないと無駄になってしまいます。

物資輸送であれば、「物資をどうするのか」です。

もちろん、日頃から蓄えておけばいいのですが、一カ所に集めることは全国の災害に対処する上で、必要な予備輸送が増えることになります。

また、物資を近隣現地であつめるとしても、告知方法や一時集積場所の問題があります。

これらの法律やその他考えられる諸問題を解決する必要があるのです。

出来ると思っています

素人考えかもしれませんが、空飛ぶたぬきはこれらの諸問題は解決できると考えています。

  • 法律に関する事項は、年度包括申請を行う事により、1年ごと更新すれば・・
  • 必要な航空機は、普段は別件で使用することによって、維持費を下げる
  • 人員の救急搬送は、近隣自治体の消防に協力を依頼する
  • 物資は、必要の都度、出発地に集積する

個人で所有する航空機で物資輸送した前例もあります。(有名な病院の先生)

日頃は、航空機を使用した事業を行いつつ、災害発生時には優先して救援業務に従事する。

そんな組織があってもよいのではないのかな、と考えています。

3件のコメント

  1. ひさびさにこのコラムのページによらせていただきました。

    民間による災害救援組織・・・まだ本買って詳しく読んでいないのですが、熊本地震のとき市役所はどう動いた?とか消防署はどうだった?といった検証をした地元新聞社が、検証をまとめた本を出してます。そこで「赤十字飛行隊」という組織がどう動いたかという項目があるのです。赤十字飛行隊という民間の災害援助組織があるそうです。サイトは次のアドレスです
    http://www.jfa1953.org/chi-shi-zi-fei-xing-dui/

    この本立ち読みしかしてないのですけど、航空法の壁に苦慮したということが書いてありました。

  2. コメント失礼いたします。
    下記の手法でも、厳しいのでしょうか?
    詳しく、見ていませんが・・・。

    空港・飛行場が利用可能であれば、座席外して、食料支援(カップラーメン)は、可能だと思うのですが・・・。

    災害発生時に救援活動を行う航空機に係る許可手続きについて(具体的な手順等)http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000021.html

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